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2009年 11月 02日

11月のワークショップ ( in Tokyo ) 11.1

ピラティスインストラクター向けレクチャー 

《 運動器疾患 》

ロコモティブ・シンドローム ( Locomotive Syndrome )  その3

骨粗鬆症
   ▼概念
   ▼症状
   ▼疫学
   ▼要因
   ▼発症メカニズム
   ▼診断
   ▼検査法
   ▼分類
   ▼治療
   ▼予防





  
【概念】
 「骨量の減少と微細構造の劣化によって骨の脆弱性が悪化し、骨折の危険性が高まった全身性疾患」
(WHO 1994)
 「骨強度の低下によって骨折のリスクが高くなる骨の障害で、骨強度は骨密度と骨質の両方が反映する」
(NIH 2001)

【症状】
 骨形成速度よりも骨吸収速度が高いことにより骨に小さな穴が多発する。背中が曲がることに現れる骨の変形、骨性の痛み、さらに骨折の原因となる。骨折は一般に強い外力が加わった場合に起こるが、骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こす。
■骨粗鬆症になると問題になる点
 骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質 (QOL) を著しく低くする。
 ▼高齢者の寝たきりの原因のうち約20%が「骨折」といわれている。中でも「大腿骨」の骨折が問題となる。骨折をきっかけに寝込んでしまうと、骨折が治った後も自力で歩くことが困難になってしまう。
 ▼脊椎が圧迫されてつぶれていく(圧迫骨折)と、背中が丸くなり内臓が圧迫されるため消化不良や便秘になったり、食べたものが食道に逆流しやすくなり胸焼けがしたりする。
 ▼背中や腰などに、骨折に伴う痛みが出てくることがある。
 ▼痛みのために日常生活での動作が制限され、行動範囲も狭まってしまう。
■骨折
 若い人ではまず考えられないような、たんすにぶつかった、つまずいてころんだ、などといったちょっとした原因で骨折がおきる。また、骨折する部位にも特徴がある。
 ▼脊柱
 脊椎には軽度の「変形」から明らかな「骨折」まで、いろいろな段階の骨折がみられる。激しい痛みで動けなくなってしまうこともあるが、痛みのないこともあり、慢性の痛みがみられる場合もある。
しかし、安静にして寝てばかりいると筋力が低下し、骨もさらに弱くなってしまう恐れがある。通常コルセットで腰を固定し、座る・立つ・歩くという訓練が可能かどうかを判断。
 ▼手関節周囲
 転んで手のひらをついたときなどにおきる骨折で、手術をしたり、手首から肘のあたりまでをギプスなどで2~4週間固定。
 ▼肩関節周囲
 転んで肘などをついたときにおきる骨折で、肩のまわりをギプスなどで固定。
 ▼大腿骨
 大腿骨の上端が折れやすい理由は、この部分は転んだときに力がかかりやすいため。高齢者では転んだ時にとっさに手をつけないため、膝をついたり、しりもちをついたりして、この部分が折れてしまう。この部分の骨折は早く治して歩けるようにしなければ、寝たきりの原因になってしまうことが少なくない。そのため治療には多くの場合手術を行う。手術後は早期からリハビリテーションを始める。

【疫学】
 骨粗鬆症の新規発生率は不明。有病率は診断基準と判定部位で差があり、WHOの診断基準による調査では、日本では、50歳以上の女性は、腰椎で25-35%、大腿骨頚部で9-13%、50歳以上の男性は、大腿骨頚部で4%が骨粗鬆症と診断され、日本の骨粗鬆症有病率は、米英より低く、米国の非白人に近いと考えられている。
 骨粗鬆症の患者数は、2004年の年齢・性別人口構成と大腿骨頚部による有病率からは、男女合わせて350万人から460万人であると見積もられるが、腰椎の有病率を用いると50歳以上の女性で706万人から988万人に達する。米国は約3000万人。
骨粗鬆症の自然経過における一番の特徴は骨密度の減少。日本のでは、腰椎骨密度は45-49歳から低下が始まり、70-74歳で若年成人値の74%まで、80-84歳でその69%まで低下する。  
この変化により骨折危険度が増加して、骨折が合併症として生じるようになる。しかも、いったん骨折するとそれ自体が、年齢や骨密度から独立して新規骨折の危険因子となるため、さらなる骨折の累積が起こるという悪循環が問題になる。

【要因】
 多くの原因が複雑に関係して発症する病気なので、原因をひとつだけに決めることは出来ない。
主要因として知られる性ホルモン・加齢を含め、複合的に発生すると言われる。人種、体型、運動、喫煙、食事、アルコール摂取などが要因として知られる。人種ではアフリカ系が骨粗鬆症を発症しにくい。運動の習慣がなくやせた体型、低い身長は危険因子の一つである。骨形成に欠かせないカルシウムを不足させる動物性たんぱく過多の食事、ビタミンDの不足した食事、カフェインのとりすぎ、過剰なアルコール摂取は、食餌面における危険因子となる。喫煙は骨密度を減らすことによって危険因子となる。
 ▼加齢
 性ホルモン産生の低下のほかに、年をとると骨芽細胞(骨をつくる細胞)の働きが弱くなる。また、腎臓の働きも低下するため活性型ビタミンDがつくられにくくなったり、食事の量が少なくなったりするため、カルシウムの吸収量が低下する。
 ▼カルシウム摂取量が少ない偏食
 乳製品をとっていなかったり、偏食して栄養バランスが偏ったりすると、食物からカルシウムなどが十分にとれなくなる。
 ▼閉経
 閉経に伴って女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下すると、破骨細胞(骨を壊す細胞)の働きに骨芽細胞の働きが追いつかなくなる。
 ▼運動不足
 適度な運動で骨に刺激を与えると骨は丈夫になる。反対に、運動しなくなると骨はだんだん弱くなっていく。
 ▼日光にあたらない生活
 日光に当たると皮下でビタミンDが合成される。ビタミンDは腸からカルシウムを吸収するために必要な物質。
 ▼喫煙
 ニコチンは腸からのカルシウムの吸収を阻害し、カルシウムを尿中に排出する。また骨芽細胞の機能低下も引き起こす。
 ▼嗜好品のとり過ぎ
コーヒーなどに含まれるカフェインのとり過ぎや、過度の飲酒は骨量の減少につながる。
 ▼極端なダイエット
 食事を極端に減らすダイエットは、栄養不足、特にカルシウム不足の原因になり、骨量の減少を招く。

【発症メカニズム】
 骨は破壊と新生を繰り返す「リモデリング」(新陳代謝)によって絶えず新しく生まれ変わる。リモデリングは、海綿質で特に活発に行われており、そのときリモデリングにかかわる「破骨細胞」と「骨芽細胞」のそれぞれどちらの働きがより活発になるかによって、骨が減る方向に進むか、増える方向に進むかが決まる。つまり、破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回るために骨量が一定を保てずに減少するために起こる。
骨の増加・維持などには各種ホルモンが影響している。
 これらの細胞によって営まれる骨代謝は、性ホルモン、副甲状腺ホルモンなどの調節因子により精妙にコントロールされているが、閉経による性ホルモン不足や加齢による骨形成機能の低下が加わると骨量は負のバランスとなる。
 ▼性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)
 第二次性徴以降に分泌され、骨の成長・成熟に重要な働きをする。女性では閉経後、女性ホルモンの分泌が急激に低下するため、骨量が減少しやすい。
 ▼副甲状腺ホルモン
 大量では骨の破壊を促進する
 ▼カルシトニン
 骨の破壊を抑える
 ▼ビタミンD
 食物から吸収されるほかに、日光浴によって体内で合成され、腸でのカルシウム吸収を促進する。
 ★カルシウム・パラドックス
 2002年の世界保健機関(WHO)の報告書では、骨粗鬆症予防のための項目で、カルシウムの摂取量が多い国に骨折が多いというカルシウム・パラドックスの理由として、カルシウムの摂取量よりも、カルシウムを排出させる酸性の負荷をタンパク質がもたらすという悪影響のほうが重いではないかと推論されている。さらに、2007年のWHOの報告書で、酸を中和するほどのアルカリ成分がないとき、カルシウムが排出され骨に影響すると考えられ、アルカリ成分として野菜と果物が挙げられている。
海外の骨粗鬆症の診療ガイドラインでは、砂糖や動物性食品はカルシウムを奪う「骨泥棒」とされ、骨粗鬆症の予防のためアルカリ性食品を摂取するように言及している。また、そうしたことで発生した血中の酸を中和するのは骨の仕事だと解説している。1995年、食品の腎臓への酸性の負荷をPRAL値という指標であらわす測定方法が考え出された。酸性の食事が骨の健康を損ねるので、この目的でも用いられる。
野菜と果物を多く食べた子供は尿中のカルシウムの排出量が少なかった。野菜と果物の摂取量が多いほど骨密度が高いという研究結果が老若男女それぞれにある。
 ★喫煙が骨密度を減らすしくみ
 喫煙は、骨に直接的・間接的にさまざまな機序で作用し、骨密度を減らす。直接作用としては、ニコチンやたばこ煙中のカドミウムが骨細胞に毒として働くことが指摘されている。間接的作用としては、小腸からのカルシウム吸収の減少、ビタミンD不足、副腎皮質ホルモンや性ホルモン代謝の変化、非喫煙者よりも低い体重、非喫煙者よりも早い閉経、非喫煙者に比べて低い活動度などである。これらの直接的・間接的影響によって、喫煙者は非喫煙者に比べて、オステオカルシンなどの骨形成マーカーが低く、骨粗鬆症をきたしやすいとされている。

【診断】
 骨粗鬆症の患者は、腰や背中の痛みから受診することが多く、整形外科で診断・治療を受けることが多い。最近は、カルシウムバランスや更年期障害の治療も含めて内科や婦人科などでも診断・治療を受けることが珍しくない。骨粗鬆症の診断・治療はどの科でしているのか医療機関に直接問い合わせを。

【検査法】
 ▼問診
 ささいな原因で骨折したことがあるか、腰・背中の痛みがあるか、身長が低下したか、家族に骨粗鬆症の人がいるか、卵巣や胃を摘出する手術を行ったことがあるか、食べ物の好き嫌いはないか、喫煙・飲酒の習慣、運動の習慣、他に治療中の病気、使用している薬など
 ▼単純X線検査
 背骨(腰椎・胸椎)のレントゲン撮影をして、骨の変形や、骨折がないかなどを観察する。
 ▼骨量検査
 DXA(デキサ法)  
  X線を使って骨の密度を測定する。通常のX線撮影に比べ放射線を浴びる量はずっと少ない。
  検査台に寝たり腕を伸ばして座っているだけで数分で検査できる。
 MD法
  両手(手首から先)とアルミニウム基準計をX線で撮影し、
  骨の透過度と基準計の透過度を比較する。
 QCT法
  CT装置を使い、骨の断層像から骨の密度を測定。皮質骨、海綿骨それぞれの骨密度の測定が可能。
 超音波法
  QUS法ともいう。X線を浴びないため小児や妊婦でも測定可能。
  集団検診などでかかとの骨密度を測定する際に使われる。
 ▼尿検査
 尿中のカルシウムや「骨代謝マーカー」(骨の代謝状態を読み取れる)を測定する。
 ▼血液検査
 他の病気が原因になっておこる骨粗鬆症(続発性骨粗鬆症)を見分けるためにカルシウムやリンを測定する。骨の代謝状態を読み取れる「骨代謝マーカー」を測定したりもする。

【分類】
 ①原発性骨粗鬆症
 閉経や老化に伴い骨密度が低下するタイプのものであり、骨粗鬆症のほとんどは原発性である。閉経後骨粗鬆症では更年期におけるエストロゲン分泌量の低下が原因となり、閉経後女性にエストロゲンを補充すると骨量の減少が抑制される。また、老人性骨粗鬆症では加齢に伴う腎機能の低下によって生じるビタミンDの産生低下がそれぞれ原因となる。男性では女性のように更年期で急速にエストロゲン産生量が低下して骨粗鬆症に陥るということはないが、加齢は骨量の減少要因の一つとなる。男性でも骨密度の低下と血中エストロゲン量には相関があることも示されている。女性ではエストロゲンは卵巣で産生されるが、男性では卵巣がないため、類似の構造を持つテストステロン(男性ホルモン)から変換して産生する。高齢の男性ではテストステロン量が減少するためエストロゲン量も減少し、骨密度の低下につながると考えられている。さらに、妊娠に伴う骨粗鬆症も原発性骨粗鬆症のひとつとして数えられ、母体のカルシウムが胎児に移行してしまうことが原因である。
 1退行期骨粗鬆症
 閉経後骨粗鬆症 女性の閉経後は、女性ホルモンが少なくなるため骨吸収が強くなる
老人性骨粗鬆症 加齢とともにおこり、男性・女性の両方にみられる
 2特発性骨粗鬆症
 3特発性若年性骨粗鬆症
 ②続発性骨粗鬆症
 続発性骨粗鬆症とは何らかの疾患のバックグラウンドの上に成り立つタイプのものである。続発性骨粗鬆症の中にはさらに内分泌性、栄養性、薬物性(おもにステロイドによる)、不動性、先天性という細分類がある。
 1内分泌性 
    甲状腺機能亢進症 : 甲状腺ホルモンの働きが過剰になり、骨吸収が強くなる
    性腺機能不全   : 両方の卵巣を手術により摘除した場合、性ホルモンが低下し、
                閉経後と同様の状態になる
    副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群
 2消化器疾患  胃切除後、吸収不良症候群
 3血液疾患   多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫
 4薬剤     ステロイド、メソトレキセート、フェノバルビタール、ヘパリン
 5先天性    骨形成不全症、マルファン症候群など
 6その他    関節リウマチ : 炎症のある関節の近くの骨がもろくなる。
          また痛みのために運動しない(動かない)ためにおこる
          不動・寡動 : 寝たきりなどで骨に体重をかけていない場合、骨を作る働きが弱くなる
          栄養失調・栄養性(偏食・嗜好品のとりすぎなど)、慢性呼吸器疾患、糖尿病

【治療】 
 骨粗鬆症の治療の目的は「骨折を予防し、QOL(Quality Of Life:生活の質)を保持・改善する」こと。
 食事療法・運動療法・薬物療法で成り立つ。食事・運動・日光浴は、予防にも効果があり。
 食事  :十分な量のカルシウムをとる
 運動  :骨に力をかけることで、骨を強くする
 日光浴:日光にあたると皮下でビタミンDがつくられる(腸からのカルシウムの吸収を高める)。
 昼間に30分ほど外にいるだけでも十分(夏は日陰でもよい)
■食事療法
 日本人は慢性的なカルシウム不足だと言われている。日本人のカルシウム1日所要量(最低とるべき量)は600mgとされているが、諸外国に比べ、この値はかなり低い。にもかかわらず、この値すら達成できていないのが現状。さらに骨粗鬆症の治療ガイドラインでは1日800mgのカルシウムの摂取を勧めているので日々の食生活の中で積極的にカルシウムをとる必要性。
また、骨のためにはカルシウムだけでなく、ビタミンDなどほかの栄養素にも気を配らなければならない。
 ▼カルシウムが多く含まれる食品
 カルシウムは、食べた分すべてが吸収されるわけではない。個人差もあり、食品によって含まれるカルシウムの吸収されやすさが違う。カルシウムを多く含む食品、カルシウムが吸収されやすい食品をつとめてとるような心がけが必要。
 ▼ビタミンDが多く含まれる食品
 ビタミンDは食品から得られるほか、日光に当たることによっても皮下で合成される。
また、腎臓・肝臓でビタミンDが活性化されると、腸でのカルシウムの吸収を助ける。
■運動療法
 ▼骨をいたわりながら強くする
 骨粗鬆症の患者は、すでに骨折をおこしていたり、おこしやすくなっていたりする。「運動などしないで安静にしたほうがよいのでは?」と考えるのは間違い。運動をしないでいると骨は次第に弱くなっていく。骨に適度な力(主に体重)をかけることで、骨の強さは維持される。宇宙飛行士は無重力に近い状態にいるため体重が骨にかからず、意識して運動をしないでいると、短期間で骨の量が飛行前より低下したというデータがあり。
また、運動によって筋力が維持され、反射神経もよくなるので、転びにくくなるとも考えられる。
 ▼自分にあった適度な運動を継続すること
 骨粗鬆症の人のための運動は、散歩、立っている時間を長くする、買い物に歩いて行く、家の掃除をする、エレベーターの代わりに階段を使うなど、スポーツでなくても体を動かすことができればよい。
また、運動は続けて行うことが必要。散歩であれば30分ほど、そしてできれば毎日することが効果的。仲間と一緒にできるようであれば、楽しく続けられ、写真を撮りながら歩いたり、万歩計の歩数も楽しみのひとつとなる。
 ▼おすすめの運動
 骨に対する運動の効果の現れ方は、一般に運動の時間が長いほど、また骨にかかる力が大きいほど著しいとされている。しかし、強い運動は運動習慣のない中高年には不適切。軽い運動であっても、時間を十分にかければ効果がある。重い物を持ち上げる、強く体をねじる、転倒の危険があるといった運動は要注意。
体力や骨折のおこりやすさは個人差があり高齢者では他の病気の合併も考えられるので運動を始める前に主治医と相談を。
 持久運動:ウォーキング、ジョギングなど
 骨にかかる力の大きい運動:バドミントン、テニス、バレーボール、エアロビクスなど
 体力に自信のない人や何年も運動をしていないという人は、無理をせず、とにかく外に出て歩いてみることから始める。外に出れば日光浴もできる。
■薬物療法
 骨粗鬆症の薬物療法は、食事療法・運動療法の上に成り立っている。つまり、食事からカルシウムやビタミンDなどをしっかりとること、運動すること、適度に日光を浴びることなどをきちんと行った上で、必要に応じて医師が薬を処方することになる。また、薬剤を飲んでいても、食事や運動に気をつかう必要がある。

【予防】
 骨粗鬆症を予防するには要因を除去する事、具体的には発症前の運動と食物の内容が重要である。食事・運動・生活環境に気をつけることで、骨量の減少をくいとめたり骨折を避けたりすることができる。毎日の積み重ね。
■食事
 ▼カルシウム収支  入る 腸から吸収されるカルシウム 
              出る 古くなった骨が代謝されたときに尿中に出るカルシウム
              出る 消化液に含まれて便に排泄されるカルシウム
 カルシウムの収支をプラスにするためには、1日560mg以上のカルシウムを食物からとる必要がある。日本人のカルシウム1日所要量600mgとほぼ同じです。毎日25mgの「骨の貯金」をするためには1日のカルシウム摂取量は800mgとなる。
一方、海外での「51歳以上の女性でホルモン補充療法をしていない人のカルシウム1日摂取量」は、アメリカでは1,500mg、ヨーロッパでは1,000mgと定められている。
 ▼ビタミンDはカルシウムを効率よく吸収するために必要
 ビタミンDは食物にも含まれているが、日光浴をすることによっても皮下で合成される。皮膚の中にある「プロビタミンD」が紫外線の作用でビタミンDになる。ビタミンDは肝臓・腎臓で「活性型ビタミンD」に変化して腸からのカルシウム吸収の手助けをするので、肝臓・腎臓に障害があるとカルシウムの吸収が低下する原因になる。
 ビタミンDの1日所要量は成人で100IU(2.5μg)とされており、食物では主に魚介類に多く含まれている。
 ▼マグネシウム不足も骨に影響
 マグネシウムはカルシウムとともに骨の健康に関係。1日の所要量は約300mgとされている。ただ、たくさんとればいいのではなくカルシウムとのバランスが重要で、カルシウム2に対してマグネシウムは1くらいがちょうどよいとされている。  ( ← 近年、首都圏生活者では1:1とも )
■運動
 すでに骨粗鬆症を起こしている高齢者が行うのであれば、家事、散歩、買い物など骨に負担の少ないものを選ぶとよい。比較的若い人が骨粗鬆症の予防に運動を始めるのであれば、特に「このような運動でなければならない」といったものはなく、骨に力の加わる運動ほど骨量を増加させるにはよいとされる。
無理はケガにつながる。
◇重いものを持ち上げる運動  ◇強く体をねじる運動  ◇転倒の危険がある運動
運動はできれば毎日、無理であれば週に2~3回行う。
女性の場合、骨量は閉経後に急激に低下するため、閉経までにできるだけ骨量を増やしておくことが大切。
■骨折を防ぐために
 骨粗鬆症のある高齢者は、ささいな衝撃で骨折してしまうことがある。その原因の主なものに「転倒(転ぶこと)」がある。そのため下記症状のある人は転倒に十分注意。
 ▼膝や足に痛みがある人
 とっさの時にふんばりがきかず、転倒してしまう恐れがある。
 ▼手足の麻痺や歩行困難がある人
 転びかけたときに物につかまることができないので、手の麻痺も転倒につながる可能性あり。
 ▼めまいを起こしやすい人
 めまいが転倒につながる。
 ▼眠くなりやすい薬や血圧の薬などを内服している人
 とっさのときの動きが鈍くなりやすい。降圧剤によるめまいなどから。
 ▼視力が弱い人
 足元が見えにくい、またうす暗いところで見えにくいため、段差や障害物につまずく
 ▼耳の遠い人
 車のクラクションや自転車などに気づかずぶつかって転倒
痛いところは治療する、視力にあった眼鏡などを使う、杖を使うようにする、動きやすい服装を心がける、靴は運動靴をはく、など対処を。
■転倒を防ぐ
高齢者は家の中の敷居などの段差でつまずくことによる骨折も多い。生活の中で次のようなことを実行。
 ▼階段には手すりをつけ、最上段と最下段には目印のテープを貼る
 ▼敷居などの段差にはスロープをつける
 ▼トイレ、浴室にも手すりをつけ、スロープや「すのこ」などでできるだけ段差をなくす
 ▼電気のコード、座布団、新聞、本などにつまずいたりしないよう、家の中を片付ける
 ▼着物やすその長い服を着たときは、足元に特に注意する
 ▼サンダルやぞうり、下駄などはつまずきやすいので特に気をつける
■骨検診・骨ドック
 早期発見のために骨検診(骨ドック)を受ける。
 ▼どこで受けられる?
 多くの市町村では独自に骨検診を行っており、また「老人健康保険法(老健法)」により、年齢によっては無料で骨検診が受けられる。保健所、保健センター、市役所などに問い合わせ。広報紙にも掲載。また民間の医療機関でも骨量を測定してくれるところもあり。
 ▼何歳くらいから受けるとよい?
 女性の骨量は50歳を過ぎると急激に低下。できれば40歳くらいまでに一度骨量を測定しておき、ご自分の骨量のピークを知っておく。閉経後は年1回ずつの測定で経過を観察するとよい。また男性は腎臓・胃腸の病気や長期の寝たきり状態などがなければ、70歳くらいまでは骨量測定の必要はないと言われている。

by relathera | 2009-11-02 16:09


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